大判例

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高松地方裁判所 昭和58年(わ)56号 判決

裁判所書記官

松尾治子

本籍

青森県五所川原市字柏原町一番地

住居

青森県青森市大字浜田字玉川二一七番地二六

無職(元歯科医師)

佐々木典子

昭和二六年三月三日生

本籍

香川県大川郡長尾町昭和三二八〇番地

住居

香川県大川郡長尾町昭和三二九五番地

無職(元歯科技工士)

三谷文雄

大正一一年九月二八日生

右両名に対する各所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官山本恒己出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人佐々木典子を罰金二三〇〇万円に、被告人三谷文雄を懲役一年二月に処する。

被告人佐々木典子においてその罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人三谷文雄に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人佐々木典子は、香川県木田郡三木町大字池戸三三四六番地一において三谷歯科医院の名称で歯科医療の業務を行っていたものであり、被告人三谷文雄は、被告人佐々木典子に雇用された同医院の歯科技工士で、同医院の経理全般を掌理していたものであるが、被告人三谷文雄は、被告人佐々木典子の右業務に関し、不正に同女の所得税を免れようと企て、自由診療収入の一部を除外するなどの不正の行為により所得を秘匿した上、

第一  昭和五四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額は六、三九六万二四九円であり、これに対する所得税額は三、三〇九万六、一〇〇円であるにもかかわらず、昭和五五年三月一三日高松市楠上町二丁目一番四一号所在の高松税務署において、同税務署長に対し、同事業年度における所得金額は一、二七八万六、七二八円で、これに対する所得税額が二六一万六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の所得税額三、〇四八万五、五〇〇円を免れ

第二  昭和五五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額は六、八六九万四、〇九二円であり、これに対する所得税額は三、六一五万三、六〇〇円であるにもかかわらず、昭和五六年三月一一日前記高松税務署において、同税務署長に対し、同事業年度における所得金額は一、七七六万五三七円で、これに対する所得税額が四七二万四、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の所得税額三、一四二万九、四〇〇円を免れ

第三  昭和五六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額は七、三〇八万三、八九八円であり、これに対する所得税額は三、八八〇万二、六〇〇円であるにもかかわらず、昭和五七年三月一〇日前記高松税務署において、同税務署長に対し、同事業年度における所得金額は二、〇二一万三、〇五六円で、これに対する所得税額が五六四万六、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の所得税額三、三一五万六、四〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人佐々木典子の当公判廷における供述

一  被告人佐々木典子の検察官に対する供述調書

一  被告人佐々木典子の大蔵事務官に対する質問てん末書三通

一  被告人三谷文雄の当公判廷における供述

一  被告人三谷文雄の検察官に対する供述調書

一  被告人三谷文雄の大蔵事務官に対する質問てん末書八通

一  被告人三谷文雄作成の申述書四通

一  三谷寿子及び佐々木世児の検察官に対する各供述調書

一  三谷寿子(六通)、佐々木世児(四通)、笠井行廣、多田義俊、鎌倉正俊、宮井シゲ子、寒井徹、広瀬日出夫(二通)、宮武秀門、串田久美及び久保立身の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  神山邦夫及び佐々木世児作成の各申述書

一  大蔵事務官作成の検査てん末書五通

一  国税査察官作成の査察官報告書九通

一  高松国税局収税官吏吉浦良次作成の簿外利益調査書、収入金額調査書、期首棚卸高調査書、仕入金額調査書、期末棚卸高調査書、福利厚生費調査書、給料賃金調査書、加工賃調査書、雑給調査書、貸倒引当金繰戻額調査書、貸倒引当金繰入額調査書、青色事業専従者給与額調査書、事業専従者控除額調査書(二通)、青色申告額調査書(二通)、利子所得調査書(二通)、雑所得調査書(二通)、現金調査書、定期預金調査書、預け金調査書、有価証券調査書、棚卸資産調査書、三谷文雄勘定調査書、貸付金調査書、事業主貸調査書及び貸倒引当金調査書

一  大和証券株式会社高松支店支店長貢健一作成の証明書

一  三洋証券株式会社高松支店支店長高橋一郎作成の証明書三通

一  株式会社香川相互銀行長尾支店支店長宮脇一作成の証明書

一  株式会社百十四銀行三木支店支店長長尾林太郎作成の証明書二通

一  株式会社百十四銀行長尾支店支店長長尾廣司作成の証明書

一  株式会社百十四銀行津田支店支店長細川忠作成の証明書

一  株式会社百十四銀行中央市場支店支店長小島徹作成の証明書

一  株式会社百十四銀行高松駅前支店支店長加藤末信作成の証明書

一  株式会社百十四銀行田町支店支店長佐藤貞親作成の証明書

一  株式会社百十四銀行東支店支店長田中昌典作成の証明書

一  竹内英孝作成の証明書

一  押収してある自由診療収入ノート一冊(昭和五八年押第四八号の五)

判示第一の事実につき

一  高松国税局収税官吏吉浦良次作成の脱税額計算書(自五四・一・一 至五四・一二・三一)

一  押収してある確定申告書(五四年度)一綴(同号の一)、自由診療収入綴一綴(同号の四)、患者日計表(五四年一、二月分)二冊(同号の六)、日計表(五四年四乃至一二月分)八冊(同号の七)及び一般カルテ(五四年分、五八七枚)一綴(同号の三一)

判示第二の事実につき

一  高松国税局収税官吏吉浦良次作成の脱税額計算書(自五五・一・一 至五五・一二・三一)

一  押収してある確定申告書(五五年度)一綴(同号の二)、日計表(五五年一乃至一一月分)一一冊(同号の八乃至一八)、患者日計表(五五年分)一綴(同号の二九)及び一般カルテ(五五年分、五八五枚)一綴(同号の三二)

判示第三の事実につき

一  高松国税局収税官吏吉浦良次作成の脱税額計算書(自五六・一・一 至五六・一二・三一)

一  押収してある確定申告書(五六年度)一綴(同号の三)、日計表(自五六・一・二四 至五六・二・二八)一冊(同号の二〇)、日計表(自五六・三・二 至五六・五・九)一冊(同号の二一)、日計表(自五六・五・一一 至五六・五・三〇)一冊(同号の二二)、日計表(五六年六乃至一一月分)六冊(同号の二三乃至二八)、患者日計表(五六年分)一綴(同号の三〇)及び一般カルテ(五六年分、五〇七枚)一綴(同号の三三)

判示第二及び第三の各事実につき

一  押収してある日計表(自五五・一二・一〇 至五六・一・二三)一冊(同号の一九)

(法令の適用)

被告人三谷文雄の判示第一及び第二の各所為はいずれも昭和五六年法律第五四号(脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律)附則第五条により同法による改正前の所得税法第二三八条第一項に、判示第三の所為は改正後の所得税法第二三八条第一項に該当するところ、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪なので、同法第四七条本文、第一〇条により最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年二月に処し、情状により同法第二五条第一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右の刑の執行を猶予することとする。

さらに、被告人三谷文雄の判示各所為は被告人佐々木典子の判示業務に関しなされたものであるから、被告人佐々木典子に対しては、判示第一及び第二の罪については前記改正前の所得税法第二四四条第一項により同法第二三八条第一項の罰金刑にそれぞれ処せられるべきところ、情状により同法第二三八条第二項を適用し、又判示第三の罪については前記改正後の所得税法第二三八条第一項の罰金刑に処せられるべきところ、情状により同法第二三八条第二項を適用し、以上は刑法第四五条前段の併合罪なので、同法第四八条第二項により合算した金額の範囲内で同被告人を罰金二、三〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法第一八条により金五万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとする。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 安藝保寿)

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